血管代謝病態解析学分野 との共同研究

マイクロRNA

手術前後の分子生物学的な全身状態の変化

手術前後で変化するマイクロRNA

当研究室では、心臓血管外科手術前後の分子生物学的に全身状態の変化を解析しています。分子生物学は生体内の蛋白質、DNA、RNAなどの微小分子を解析し、生命現象を解明する学問です。私たちは、特にマイクロRNAに注目して研究をしています。マイクロRNAは、DNAからRNA、蛋白質を合成する過程を邪魔します。そして、一つのマイクロRNAが、たくさんのRNAの働きを邪魔して蛋白質を合成できなくします。つまり、手術前後で変化するマイクロRNAが解れば、手術により変化するたくさんのRNAや蛋白質がわかると考えています。マイクロRNAは癌の領域では、癌細胞の転移や浸潤に関連しており、また循環器領域では、心筋梗塞などの血管の炎症との関係が言われていますが未知の部分が多いです。私たちは、手術前から周術期、術後遠隔期のマイクロRNAの変化を比較することで循環器疾患や心臓手術が全身に与えている影響を解明できると考えています。

フォン・ヴィルブランド因子

マルチマー解析を用いて

血が止まらなくなる状態の原因

血液にかかるストレスと血小板に関する研究、これに関与するフォン・ヴィルブランド因子の研究にも力を入れています。フォン・ヴィルブランド因子とは、出血した際に血管の穴を塞ぐ際に必要な糊のような物質です。大動脈弁狭窄症といった弁膜症の患者さんや、心臓をサポートする一部の機械を使用すると、血液は狭いところを通過する必要があり、その際にストレス(ずり応力と呼ばれています)がかかります。近年このストレスが原因でフォン・ヴィルブランド因子が破壊され、血が止まらなくなる状態の原因となることが分かってきました。フォン・ヴィルブランド因子のマルチマー解析など詳しい検査は国内では限られた施設でしかできませんが、当院でもこのような検査ができるようになり、更なる病態の解明に向けて研究を続けています。

iPS細胞

京都大学とのコラボ実験

京都大学とコラボした心筋シート実験

当研究室では京都大学からの依頼を受け、iPS心臓再生研究に関する動物実験施設を提供し、心筋シートに関する動物実験をコラボで行っています。鹿児島大学の先端科学研究推進センター生命科学動物実験ユニット動物管理・小動物研究推進部門は歴史が古く、昭和50年4月に全国では4番目の大型動物実験施設として開設されました。当施設は5階建で、SPF動物、トランスジェニック動物、一般動物等の飼育室の他、各階に処置室を、2階には手術室とX線室、1階には実験室、動物検疫室、検査室、洗浄室を備えています。飼育環境に関しては、全国的にも初めての一方向性気流方式を採用し、飼育室内臭気および浮遊細菌・粉塵等を大幅に減少させた結果、飼育室内環境は大きく向上し、全国の他施設の模範となっています。