「心臓の手術では、胸をどのように開くの?」「心臓を止めても大丈夫?」「手術には何時間くらいかかる?」心臓手術を受けることになったとき、ご本人やご家族には、さまざまな疑問が浮かぶのではないでしょうか。今回は、鹿児島大学病院 心臓血管外科の上田英昭医師が、心臓手術にまつわる疑問にお答えする動画をご紹介します。胸を開く方法や小さな傷で行う手術、人工心肺の役割、手術時間について、動画の内容をもとに解説します。
心臓の手術では胸をどのように開くのか
心臓は、胸の中央にある「胸骨」という骨の奥に位置し、「心膜」という膜に包まれています。胸の正面から心臓に到達する手術では、皮膚だけでなく胸骨を切り、さらに心膜を開く必要があります。
胸骨を切る際には、専用の電動のこぎりを使用します。その後、「開胸器」と呼ばれる金属製の器具で胸骨を左右に開き、手術に必要なスペースを確保します。
骨の状態には個人差があり、若い方ではしっかりしていても、ご高齢の方ではもろくなっている場合があります。動画では、胸を開く際にはその違いによる影響は大きくない一方、手術を終えて胸骨を閉じる際には、骨の硬さによって固定のしやすさが変わると説明しています。
切った胸骨が回復するまでの期間
胸骨を切った後は、骨折と同じように、骨がつながるまでの時間が必要です。動画では、その目安を2〜3か月と説明しています。
ただし、これは「2〜3か月間、ずっと入院する」という意味ではありません。全身の状態や生活動作の回復を確認し、胸骨が完全につながる前に退院することもあります。
退院後も胸骨の回復は続きます。日常生活や運動をどの程度まで再開できるかは、手術内容や回復状況によって異なるため、担当医の指示に沿って、少しずつ活動の範囲を広げていきます。
小さな傷で行う心臓手術という選択肢
心臓手術には、胸骨を大きく切開する方法のほかに、小さな切開から行う方法もあります。こうした手術は「低侵襲心臓手術(MICS)」と呼ばれます。
当院では、小型のカメラで心臓の様子を確認しながら、細長い鉗子などの器具を使って手術を行っています。大きく胸を開かずに、限られたスペースから必要な操作を行う方法です。
動画では、当院で小さな傷による手術を行う主な対象として、僧帽弁閉鎖不全症を紹介しています。また、手術する場所を十分に見渡し、操作できる条件が整えば、三尖弁閉鎖不全症も対象となることがあります。
一方、すべての心臓の病気に、この方法を選べるわけではありません。病気の種類、心臓や大動脈の形、全身の状態などを確認し、小さな切開で安全に手術できるかを判断します。
小さな傷から心臓を見るための肺の管理
胸の横から心臓に近づくときには、肺が手術する場所の手前にあります。そのため、動画で紹介している右胸からの小開胸手術では、右の肺を一時的にしぼませ、心臓が見えるスペースをつくります。
肺は、小さな空気の袋がたくさん集まった臓器です。風船のように、空気が抜けると小さくなる性質があります。この仕組みを利用し、麻酔科医が呼吸を管理しながら、左の肺で換気を行います。
この方法を行うには、片方の肺でも十分に酸素を取り込める呼吸機能が必要です。また、過去の右胸の手術や炎症などによって肺の周囲が癒着している場合には、手術が難しくなることがあります。
傷の大きさだけでなく、肺の働きや過去の病歴も、手術方法を選ぶうえで大切な要素です。
心臓を止めて手術するときに使う人工心肺
心臓には、全身に血液を送り出す役割があります。では、手術のために心臓を止めている間は、どのように血液を循環させるのでしょうか。
その役割を担うのが「人工心肺」です。人工心肺は、体の外に導いた血液に酸素を加え、ポンプで全身に送り出すことで、心臓と肺の働きを一時的に代行します。
弁膜症など、心臓の内部を直接操作する手術では、一般に人工心肺を使い、心臓を止めた状態で治療を行います。一方、心臓の表面を走る冠動脈のバイパス手術では、心臓を動かしたまま、人工心肺を使わずに行える場合もあります。
また、大動脈の手術でも、治療する部位や手術の内容に応じて人工心肺を使用します。人工心肺を使っている時間のすべてが、心臓を止めている時間というわけではありません。
心臓を止めずに手術できるかは病気や術式によって異なる
医療ドラマなどを見て、「優れた外科医なら、どんな手術でも心臓を止めずにできるのでは」と感じたことがある方もいるかもしれません。
上田医師は、心臓を止めて行うか、動かしたまま行うかは、治療する病気や手術の内容によって異なると説明しています。
心臓を止める必要がある手術では、人工心肺を使って全身の血液循環を保ち、心臓を保護しながら治療します。患者さんの状態と必要な治療に合った方法を選ぶことが大切です。
人工心肺があっても手術時間への配慮が必要な理由
人工心肺は、心臓手術を支える重要な装置ですが、長時間の使用には体への負担も伴います。
血液が人工心肺の回路やポンプを通ることで血球が傷ついたり、血液を固める働きに影響が出たりすることがあり、使用時間が長くなると、出血が止まりにくくなるなどの問題につながる可能性があります。
また、心臓を止めている間は「心筋保護液」という薬液を使って心臓を保護しますが、心臓への負担を完全になくせるわけではありません。
そのため、人工心肺を使う時間と心臓を止める時間の両方に配慮しながら、必要な治療を安全かつ確実に進めることが求められます。
心臓手術への疑問を動画で詳しく解説
心臓手術と一口にいっても、胸を開く方法や人工心肺の使い方、手術にかかる時間はさまざまです。病気の種類や心臓・血管の状態、呼吸機能などを確認し、一人ひとりに合った方法を検討します。
動画では、上田英昭医師が、普段は知る機会の少ない手術の仕組みを、身近なたとえを交えながら説明しています。心臓手術について理解を深めたい方、ご家族の手術を控えている方は、ぜひ動画もご覧ください。
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